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プシューっという独特な音とともに、扉が開いた。
今度は、家まで歩く。
「あ、そういえば」
「ん?」
「その制服、意外とよく似合ってる」
「あ、ありがと・・・」
意外と、という言葉にとげを感じながらも、嬉しさの方が勝った。
おしゃれな西高の制服は、自分に似合ってるかどうか少し心配だったから。
その言葉は、ぐるぐると何度も頭の中を巡った。
嬉しいけど、ちょっぴり恥ずかしい。
普段はめったに褒めないくせに。
余計に嬉しく感じるのは、そのせいかもしれない。
「久しぶりに競走しよっか」
「全然運動してないし、無理だよ」
「よーい・・・ドンっ!」
私の言葉には少しも耳を傾けず、春輝は1人で勝手にスタートを切っていた。
「えっ、ちょっ、春輝!」
この前と同じような速さで、瞬く間に遠ざかっていく。
いつまでも少年の心を忘れていないというか、子どもっぽいというか。
けど、無理に大人ぶるよりも私はそっちの方が好き。
「春輝待てー!」
このままじゃ春輝に置いて行かれる。
私は春輝を追いかけた。
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