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そして、電車に遅れないように、少し早めに家を出る。
「顔色悪いけど、大丈夫?」
「あ、うん。平気」
いつも通り春輝の家に行った後、痛みを紛らわそうと足早に歩く。
こういう時は、じっとしていない方がいい。
長年の経験から、少しわかる。
「ホント?」
春輝は腰をグイッと曲げると、私の顔を覗き込んできた。
「平気だよ」
本当は、今すぐにでも引き返して眠ってしまいたい。
でも、もう高校生になったし、こんな理由で休むわけにはいかない。
頑張れ、私。こんな痛み、なんでもない。
へっちゃらだ。
「そういや今日、英語の時間に実力テストするって言ってたよな」
「そうだっけ?」
「勉強した?」
「してないよっ」
イライラする。
誰が悪いとかじゃない。
人の声、歩く音、電車の音・・・
そういうの全てに、イライラしてしまう。
「やっぱさ、奈緒大丈夫じゃないだろ?」
「大丈夫だって言ってるじゃん!」
優しく額に触れようとした春輝の手を、強く払ってしまった。
ゴツゴツした感じが、右手に残っている。
「ごめん・・・・・・、 私、先行くねっ」
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