Page.1*日課

14/20
前へ
/58ページ
次へ
そして、電車に遅れないように、少し早めに家を出る。 「顔色悪いけど、大丈夫?」 「あ、うん。平気」 いつも通り春輝の家に行った後、痛みを紛らわそうと足早に歩く。 こういう時は、じっとしていない方がいい。 長年の経験から、少しわかる。 「ホント?」 春輝は腰をグイッと曲げると、私の顔を覗き込んできた。 「平気だよ」 本当は、今すぐにでも引き返して眠ってしまいたい。 でも、もう高校生になったし、こんな理由で休むわけにはいかない。 頑張れ、私。こんな痛み、なんでもない。 へっちゃらだ。 「そういや今日、英語の時間に実力テストするって言ってたよな」 「そうだっけ?」 「勉強した?」 「してないよっ」 イライラする。 誰が悪いとかじゃない。 人の声、歩く音、電車の音・・・ そういうの全てに、イライラしてしまう。 「やっぱさ、奈緒大丈夫じゃないだろ?」 「大丈夫だって言ってるじゃん!」 優しく額に触れようとした春輝の手を、強く払ってしまった。 ゴツゴツした感じが、右手に残っている。 「ごめん・・・・・・、 私、先行くねっ」
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加