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1ヶ月後。
13時。5限開始10分前。
机の脚が教室の床を撫でる、両手で耳を塞ぎたくなるような音が左手から聞こえてきた。
「奈緒!頼む!」
「!?」
驚きのあまり、声さえ出ない。
人って、予想しなかったの事が起こるとこうなるのか・・・
一つ学習した。
「教科書見せて!下さい!」
「はぁ・・・」
そう言うと、春輝は、私の返事なんて聞かないまま教室を飛び出した。
先生の所にでも行ったのかもしれない。
「全く・・・」
「奈緒ちゃん」
深いため息をつく私を見かねた清尾くんは、体ごとこちらへ向けた。
「なに?」
「春輝って、昔からあんななの?」
「あー、言われてみればそうかも。前もって準備がしとかないからだよ。朝だって、ギリギリまで寝てるから、持ち物の確認出来ないし」
「ハハハっ」
ぶつくさ言っている私を見て、清尾くんは笑い出した。
「春輝の事、よく見てるんだね」
「まぁ、幼なじみだし・・・」
「幼なじみ、か・・・」
「清尾くん?」
少しため息を交えたような清尾くんの言葉に、私は違和感を覚えた。
「あ、春輝帰ってきたよ」
その言葉の真意は分からないまま、私はその先に目を移した。
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