Page.2 *きっかけ

2/9
前へ
/58ページ
次へ
1ヶ月後。 13時。5限開始10分前。 机の脚が教室の床を撫でる、両手で耳を塞ぎたくなるような音が左手から聞こえてきた。 「奈緒!頼む!」 「!?」 驚きのあまり、声さえ出ない。 人って、予想しなかったの事が起こるとこうなるのか・・・ 一つ学習した。 「教科書見せて!下さい!」 「はぁ・・・」 そう言うと、春輝は、私の返事なんて聞かないまま教室を飛び出した。 先生の所にでも行ったのかもしれない。 「全く・・・」 「奈緒ちゃん」 深いため息をつく私を見かねた清尾くんは、体ごとこちらへ向けた。 「なに?」 「春輝って、昔からあんななの?」 「あー、言われてみればそうかも。前もって準備がしとかないからだよ。朝だって、ギリギリまで寝てるから、持ち物の確認出来ないし」 「ハハハっ」 ぶつくさ言っている私を見て、清尾くんは笑い出した。 「春輝の事、よく見てるんだね」 「まぁ、幼なじみだし・・・」 「幼なじみ、か・・・」 「清尾くん?」 少しため息を交えたような清尾くんの言葉に、私は違和感を覚えた。 「あ、春輝帰ってきたよ」 その言葉の真意は分からないまま、私はその先に目を移した。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加