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私、バカじゃないの!?
沈黙を破ろうとした言葉が、なんでそんなのになるの・・・
「な、なーんちゃ・・・」
「好きだよ」
「...って...」
撤回しようとしたのに、小声で言った春輝の言葉が聞こえちゃった。
だけど、どうせ根拠なんてない。
からかってるに決まってる。
けれど、春輝は続けた。
「俺は好きだけど」
「!」
「物の扱いが丁寧なトコとか、挨拶をちゃんとするトコとか、元気が良いトコとか。いろいろあるじゃん」
なんで、こんな時だけ真面目に答えるの。
そんなの、そんなの・・・
「奈緒? なんで、泣いてるんだよ・・・」
泣いてる? なんで?
地面を見ると、何か所か濃いグレーになっているところがあった。
「ごめん・・・」
私は、立ち止まったままの春輝を置いて家まで走った。
爽やかだけど少し甘めの、その匂いから逃げてきた。
勘違いをしてしまった。
一瞬だけ、「好き」に気持ちを奪われそうになった。
全身が熱気に包まれているように、熱い。
私、熱でもあるのかな。
嘘をつき続けるのには限界があることを、たった今思い知らされた。
なんだ、私は・・・
春輝のことが、好きだったのか・・・
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