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無理に明るくしようとして、頑張ってたのがバレバレだったんだと思う。
カッコ悪い。
こういうのを、切ないって言うんだっけ。
うつむきながら歩いていると、私は時間を忘れてしまうみたい。
駅は、もう目の前だった。
学生、いっぱいいる。
カップルと思しき人たちも、何組かいる。
お互いを見つめ合って、二人とも幸せそうで。
付き合う、か・・・
私は、春輝とどうなりたいんだろう。
そこで初めて、自分の中で、好き=付き合う という方程式が出来上がってないことに気付いた。
そんなことは、家でゆっくり考えよう。
バックに入っている定期を探していた時だった。
<ヴー、ヴー・・・>
携帯が振動し始めた。
「もしもし」
『奈緒? 俺だけど・・・』
「・・・うん」
電話口から聞こえてきたのは、春輝の声だった。
少し、大人の男の声に聞こえる。
『今どこ?』
「駅」
『ちょっと待ってて』
「え?」
「電車乗らないで、ちょっと待ってて」
声を聞いただけで、こんなにも胸が躍る。
すぐそこにいるような気がして、たまらなく嬉しくなった。
「2番乗り場」
『わかった』
やっぱり、好きだな・・・
春輝のこと、大好きだ。
待ってて、なんて言われて、帰るはずがない。
私はすぐそこのベンチに腰掛けて、彼が来るのを待った。
電車の風が少し冷たいけど、そんなのは全く苦痛にならなかった。
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