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いつも通りの状態に戻ったところで、私はお決まりの台詞をおばさんと交わす。
「今日は?起きてる?」
「今、朝ご飯食べてるわ」
私には、朝の日課がある。
いつからそうなり始めたのかは、自分でも分からない。
毎朝同じことをしてから、私の一日は幕を上げる。
その日課とは―――――
幼なじみを起こしに行くこと。
「わかった!」
その言葉を耳にした私は、早速台所へ。
薄い木の色をした楕円型のテーブルでは、西高の制服を着た一人の男子が黙々と朝食を摂っている最中だった。
その姿を見ていると、どうしても笑いそうになってしまう。
「おはよ!」
あと少しで笑いそうになったのを、朝の挨拶で打ち消すのも毎朝の恒例行事になりつつある。
「・・・はよ」
そしてこの彼こそが、私の正真正銘の幼なじみ(くされ縁に近い)。
名前は、宇都宮 春輝(うつのみや はるき)。
正面から見ることが多かったからか、横顔を見ている今日は、なんだかはっきり見える。
春輝の鼻筋とか、主張しすぎてない睫毛とか、手元を見つめる二重瞼とか。
「腹減ってんの?」
「さっき食べたばっかだよ?なんで?」
「じゃあ、なんでずっとこっち見てんの?」
春輝のことを見てたから、なんて言えるわけがない。
そんなこと言っちゃったら、勘違いされる可能性大だし・・・
「なんでもないよーっだ」
そして、すぐ隣にある居間のコタツへと、逃げるようにダイブした。
「・・・あそ」
理由もなくあっかんべーをしてしまった・・・
まだまだ、私も子どもだなー。
「奈緒、ちょっとこっち来て」
「なに?」
「座って」
ぽすぽすと座る位置を指示され、私はぬくぬくのコタツから出てそこへ座った。
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