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新入生だけあって来るのが早く、教室の席は既に半分以上が埋まっていた。
少し大きめで真新しい制服に身を包んだクラスメートたちは、隣近所の子と遠慮気味に話をしている。
そんな中、バッグをおろして準備をしていると、後ろから肩をトントンされた。
「世良優梨愛(せら ゆりあ)です。これからよろしくね」
私が振り向くと、彼女は簡単な自己紹介をした。
そして、花が咲いたように微笑んだ。
うわ~、綺麗、可愛い~・・・
通った鼻筋、くるんとした大きな瞳(め)、長い睫毛(まつげ)、色白ですべすべの肌。
全てが均等に整った彼女は、まじまじと眺めている私を見ながら小首を傾げていた。
「あの・・・」
「あ、えと・・・、首藤奈緒です」
「これからよろしくね、奈緒ちゃん!」
どうやら私は、完全に彼女に見惚れていたらしい。
気づいたら自己紹介は終わっていて、彼女は私のことを『奈緒ちゃん』と呼んでいた。
「よ、よろしくね、優梨愛ちゃん」
名前を呼ぶのがなんとなく照れくさく、少し声が震えた。
「ていうか、優梨愛ちゃんて可愛いね!」
「私なんか全然だよ!」
それを打ち消そうとしたつもりだったのに、謙遜させてしまい・・・
「奈緒ちゃんの方が可愛いよ」
ついには、気まで遣わせてしまった。
「え?いや~、そうかな~」
「奈緒がかわいい?」
「え?」
急に横入りしてきた男子の声に、優梨愛ちゃんは喋るのをやめた。
きっと知らない人だったからかな。
私は分かったけれども。
私の事を名前で呼ぶ時点で、その存在はただ一人。
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