第1章

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広島空港に到着し、タクシーでまず正気道会の広島支所に向かった。 そこは正気道会館を小さくしたようなたたずまいで、中にはちゃんと道場も備わっている。入り口から入ると稽古をしている掛け声が聞こえてきた。 「やってるな」 それを見ながら、事務室に入っていくと、大柄で無精ひげを蓄えた男性が、笑顔で迎えてくれた。 「おう、智樹。元気そうじゃないか。そっちが奥さんか。クー!若くてこんなかわいい嫁をもらうなんて、うらやましいぜ」 気安く智樹さんと話す様子から、古くからの知り合いなんだと思った。 この人が大山支所長とのことで、あたしは照れながらも挨拶を交わした。 あたしたちは勧められるまま応接ソファに腰をおろして、大山支所長と向き合うと、智樹さんが聞いた。 「ところで、例の『気』はいくつの子?」 「ああ、下調べによると9歳の男の子らしい。やはり、初手だった」 大山さんは封筒から書類と写真を取り出し、智樹さんに渡した。 「やっぱりそうか」 智樹さんは真剣な顔となり、それらを見た。 「サッカーの練習中だったらしい。ちょっとした小競り合いの最中にその子が『気』を発してしまって、相手に軽い怪我を負わせたそうだ。まわりはその子が暴力を振るったと思っているらしく、今日母親が謝りにいっている」 大山さんは厳しい口調でそう言った。 「あの、初手って……?」 あたしは真剣な二人の話に口を挟むのは申し訳ないと思いながら、恐る恐る聞いた。 「ああ、初手っていうのは、『気』を初めて使うことだよ。たいていは道場で鍛錬して、素質のある子が『気』の使い手になるんだけど、まれに大きな才能を持った子は、鍛錬なしでも感情の高ぶりをきっかけに『気』を発してしまうことがあるんだ。今回の子がそうだね。 俺たち正気道会は、無断使用を防ぐことの他にも、こういった『気』の力を爆発させてしまう子供たちをフォローすることも大切な仕事の一つなんだ。 きっと、本人にとっては何が起こったのかわからない恐ろしい状態だろうからね」
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