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あたしは、智樹さんが『気』を使って守ってくれたときのことを思い出した。
手を触れていないのに、『気』の力が人を押しのける。9歳の子がそれをよくわからずに使ったら……どんなに恐く感じるだろう。
どんなに、恐く……。
そう思ったとたん、急に身震いがした。
恐い……。そう、とても恐いことだ……。
あたしはなぜか、その恐怖が自分のことのように身近に感じられ、思わず両手で自分の腕を押さえた。
「ん?寒い?ちょっと冷房強すぎたかな?俺、どうにも暑がりでね」
大山さんは立ちあがって事務机に行くとリモコンを探し始めた。
「いえ……大丈夫です。なんでも、ないです」
あたしは笑顔を作って大山さんの背中に言ったけど、なぜかひきつってしまう。
なんで、体が震えるんだろう。
何が恐いんだろう。
あたしは自分でもよくわからず、戸惑った。
そのとき、隣に座っている智樹さんが、あたしの肩に手をまわして引き寄せてくれた。
後から考えるとすごく照れくさいことだけど、そのときのあたしは、すっと恐怖が引いて心が落ち着いていくのを感じた。
温かい智樹さんの手のぬくもりが体中を駆け巡る気がした。
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