第1章

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目を輝かせながら、見上げた少年に、智樹さんはしゃがみこんで目の高さを合わせた。 「お兄ちゃんは、東京から来ました。君に会いにきたんだよ。祐哉くん」 すると、少年、祐哉くんの顔がさっとひきつった。 「どうして?僕を捕まえにきたの?僕が……僕が亨くんを、怪我させちゃったから?」 祐哉くんはみるみるうちに目に涙を溜めた。 「でも、僕、亨くんに触ってないんだよ。それなのに、亨くんが倒れてゴールポストに頭をぶつけちゃったんだ。でも、誰も信じてくれない。ママも……。僕、どうしちゃったのかな……。僕、何したのかな……」 こらえきれず、祐哉くんはぽろぽろと涙をこぼした。 智樹さんはしゃがんだまま、祐哉くんを腕の中に引き寄せた。 「大丈夫。心配いらないよ。俺は君を助けにきたんだから」 恐い……。 あたしは再び恐怖に襲われた。祐哉くんの気持ちがなぜかよくわかる。 恐い……。でも、今、本当に恐いのは祐哉くんだ。自分に何が起こっているのかわからない恐怖。 祐哉くんの肩ごしに、智樹さんが心配そうにあたしを見た。 今は祐哉くんから智樹さんを取り上げるわけにいかない。 あたしはぐっとこらえて、ひきつった笑顔を作った。 それから、落ち着いた祐哉くんに、家に連れて行ってもらった。 智樹さんが、お母さんにも話をしたいと言ったからだ。 アパートのドアを開けた母親は、疲れたような顔をしていたが、それでも祐哉くんが智樹さんのことを友達と紹介すると、快く家に入れてくれた。 「祐哉にこんな年の離れたお友達がいたなんて、ママ知らなかったわ」 祐哉くんママはお茶の準備をしながら、祐哉くんに言った。 「あ、どうぞおかまいなく」 あたしは慌てて言ったけど、祐哉くんママは笑顔でお茶を出してくれた。 とても優しそうな、やわらかな印象の女性だった。 大山さんの事前調査に祐哉くんの父親は早くに亡くなっているとあった。きっと女手ひとつの子育ては大変だったに違いない。そのための芯の強さのようなものも感じさせる女性だった。
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