第1章:俺の殴りたい田中はこの中に一人いる

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朝の商店街をペースを落とさず走る青年がいた。 彼の名は郁善 当麻(イクゼン トウマ)。 青春的高校生活を有意義に謳歌し、 一年生で鰰鍋(ハタハタナベ)学園の中心人物になった。 容姿端麗、運動神経抜群… 何をやらせても完璧で秀才な彼は今日も青空の下、 爽やかな汗を流しながら走っていた。 そんな彼を見た商店街の通行人は足を止め、目を見張る。 艶々とした綺麗な黒髪を揺らし、 色白の肌に映えた赤い唇から色っぽい息を吐くその姿は 誰をも魅了した。 って言うのは俺の妄想。 痛々しいぐらいの呆れた脳内変換。 ってか、郁善 当麻って誰だよwww 俺そんなカッチョエエイケメンな名前じゃねえしwww 田中 心(タナカ トコロ)だし。 ごく一般的にある、あるある名字だし。 …名前はダセェ名前だし。 心って書いてどうしてトコロって読むんだよ!! おかしいんじゃねえの?! まだ、そのまんまのココロの方がカッコよくて 良かったよ!! 何で俺のアホ両親は変な読み方にしたんだよ!! マジで頭のネジ全部ゆるみまくってんじゃねえの? それに、容姿平凡、運動神経皆無だし。 ……唯一、俺のどうしようもない妄想とリアルが 一致しているのは黒髪に色白。 真っ黒な俺の髪は少し長く、毛先が跳ねている。 それも思いっきり。 たぶん風呂上がりにドライヤーをせず、 いつも自然乾燥で乾かすからだ。 さらにクシを梳かず、寝癖のままだからだろう。 癖になってしまた。 まあ、それはそうれでどうでもいい話だ。 ……色白。 部活は何もやってないので強制的に帰宅部。 平日も休日も学校と母のお使い以外は部屋に引きこもり。 え?友達とあそばないの?てか、いるの? いいえ、平凡でつまらない俺でも 付き合ってくれる友人は一人います。 はい。 たった「ひ・と・り」います。 少なすぎ~引くわ~っと思ったそこのあなた!! 平凡すぎる俺にそこまで求めないでくれたまえ。 ボッチよりはマシじゃないか。 まあ、学校以外ではほとんど合わないけどな。 ケータイでやり取りはするけど。 だいたい、なんで自分から体力を減らしにいくんだ。
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