第1章:俺の殴りたい田中はこの中に一人いる

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「………あっ」 声を出した時はもう手遅れだった。 悔やんでも悔やんでも悔やみきれない。 俺の手から離れていた物はもう戻ってこない。 どうして? どうしてみんな俺の手から離れていく? 俺は 俺は嫌われているのか? 今日はこんなにも神に愛されていない。 俺は手から落ちていった物を目で追った。 「……やっと手に入った…俺の闇鍋パンがぁぁぁあ!!」 鰰鍋学園で名物の闇鍋パン。 月に一度、限定で一個売りだされる。 値段は通常のパンよりやや高め、2000円(税別)。 味はその時その時違うため、 美味いか、不味いか定かではない。 月はじめに購買で注文をして所有権を買う。 買った後、一週間後に贈られる。 それが今日だった。 凡人の俺がカラッカラの脳味噌で考え、 トラップを何十にも仕掛けて、 勝ち取った闇鍋パン。 もう二度と俺のような凡人には手に入れれない代物。 それが今日、やっと口にすることができるはずだったのに。 だったのに!! 俺の友人いや、何の面識も糞もないクラスメイト、 林ノ林によって台無しにされてしまった。 お昼時、朝の乙女奇行走りによって遅刻してしまったため、 先生様に説教を被った後、 購買に行き、恋し愛しき闇鍋パンを受けたまわった。 教室にて、窓際の自席につき、 食そうと思って口に近づけたその時……!! ドンッ!!!!! そこらへんを追いかけっこしていた林ノ林がギャアギャアと 叫びながら俺の椅子&机に突進してきたのだった。 その拍子で包装紙からパンが滑り出し、飛び出す。 「うぼぁああ!!いってぇええ!! 何するんだアホ佐々木!! 田中に突っ込んじまったじゃねえか!? お前も同じ目を合わしてやるrrrrr!!」 おめえももう一回机にぶつけてやろうか? あ”?林ノ林… 俺にぶつかったことも、闇鍋パンにも謝りもせず!!! 返せ!!俺の2000円(税別)!! 返せ!!俺の凡人の青春の時間を!! …とも林ノ林に言えず、 チキンでライスな俺は顔を顰めて申し訳程度に林ノ林の 背中を睨むだけ… 俺の手から滑り、吹っ飛んだ闇鍋パンは 空を描き、お外へとダイブ☆
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