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冬華が窓口に配属されて、数か月が経った。
その間、同じ窓口配属の永峰洋介と、未熟ながら頑張って仕事を進めてきたが、先輩の永峰にも難しい事例が有り、度々、白井の助けを借りなくてはこなせないのが現状だった。
冬華の属する部署は、何だかんだと飲み会が多いところだった。
まだ独身の冬華は、皆との交流を楽しんでいた。
「永峰、どうだ?お前、咲本さんと毎日顔合わすなんて、羨ましいな。女性として魅力あるし、一度ぐらい…って気持ちあるんじゃないか?」
「そ、そりゃあ…でも僕は既婚者なんで…。」
「そうだな、しょうがないな。」
と言って、白井は笑った。
そんな会話は、離れた席に居る冬華には聞こえる筈もなかった。
さらに数か月が過ぎた。
職域のソフトボール大会、冬華が打席に立っていた。
女性が立つ時には、ピッチャーはボールを拾ってはいけないという特別ルールが有った。
それでも、空ぶったり走るのが遅くてアウトになる女性は多かったので、このルールでも大した支障はなかった。
しかし冬華は、学生時代に硬式テニス部にいた為、確実にバットに当ててピッチャーゴロにした上、走るのも早く、毎回塁に出た。
その為、試合は盛り上がり、冬華の部署は優勝までしてしまった。
今夜は、祝杯だった。
「この大会で、大活躍してくれた咲本さんにかんぱ?い!!」
楽しい時間はあっという間に流れ、お開きとなり、帰りが同じ方向の白井と冬華は同じタクシーに乗ることになった。
タクシーに乗ると、白井は家とは違う方向を運転手に指示していた。
「白井さん、ここからじゃ…」
冬華が言い終えないうちに、白井に力づくで唇を奪われた。
泣きそうだった。
「冬華、拒んだら仕事でフォローは一切しない。」
脅迫だった。
冬華はそのまま、ホテルに連れ込まれた。
11月の寒い夜だった。
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