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寒さ厳しい2月。
夜8時の訪問者は客と呼べるものではなかった。
「壱琉くん!今日泊めて」
玄関先で、制服姿でドデカいバックを肩から下げて、縋るような目でそう言われたら、普通はなんて答えるだろう。
とりあえず俺は。
「嫌。」
間髪入れずに玄関を閉めた。
「エーっ?そんなこと言わないでよ!
いま初琉さん、いないんでしょー?
俺、料理も掃除もやるからさっ!
遊び相手にもなるし、ガンプラコレクションもいじらないからっ!」
「うるせぇ。美也ンとこ行け」
「亨がいるからヤダッ」
「他のダチ」
「それもヤダっ!
俺は壱琉くんが良いよー!!玄関開けてよーっ!!」
「声がでけーよ!
ご近所迷惑な上に恥ずかしいんだよ!!」
「じゃあ、今すぐ開けてっ!」
なんて、かなり強引にウチに転がり込んできたワンコが一匹。
「ん。コーヒー。砂糖とミルクは自分で入れろ」
「ありがと」
膝を抱えてソファーの上に小さくなって座っている慶太にいつからかある専用のマグカップを渡す。
「で、何があった?」
ブラックをすすりながら、ほぼ予想は付くが一応経緯を確認する。
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