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膝に顎をつけたままマグカップに息を吹きかけるフリをしながら、なかなか話し始めない。
「言わなきゃ追い出すぞ」
低い声で脅すと、諦めたのかやっと口を割った。
「…………。……ねぇちゃんと。
ケンカして……。
『顔も見たくない!バカ慶太っ!』って言われたから…。
………荷物纏めて出てきました。」
はい、予想通りー。
「お前なー、香子とケンカした位で家出てくるなよ。
自分の部屋にとじこもってろ」
あまりにつまらない理由に、思わず手近にあったクッションを軽く投げつける。
それをすんなり受け止めて抱き抱えると、慶太は下唇を噛み締めて不機嫌に言葉を続けた。
「だって、アイツ。すっげぇ細かいことにウルサいし。
……それに。」
「それに?」
「……いつまでも美也に甘えてると美也が恋愛できないから可哀想だって言われて……。
なんか、すっげぇ頭に来て…」
「頭にきて?」
「『自分だって亨に甘えてっから、別れたりくっついたりしてんだろ!』って言ったら…」
「言ったら?」
「…………泣かれた」
「お前アホだろ」
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