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……この醜い傷が我の命を奪い続けているかと考えると……
やりきれないのう。もっと我は魔族達の行く末を見届けたかった。
……ラゼルは呪いを掛けたと我に言っていたが……本当は禁術を使って我に自らの魂を与えていただけだのう。
……本当に、ラゼルは優しい子だ……こんな我に良く尽くしてくれている。
……だが……
「魔王セシアの名の元に、あらゆる魔法を打ち消せ。ダークウィドウッ……吹き抜けよ闇の風」
セシアは風呂に浸かりながら考えを巡らした後、目を細めると短く詠唱呪文を唱えた。
すると、黒き闇の風が吹き荒れセシアの背中に烙印されていたラゼルの術を跡形も無く打ち消した。
……お前の命など要らぬ。他者の命を貰ってまで生きたくはないからな。
……だが、感謝しているぞ……ラゼル。
満足した様子でセシアは笑みを浮かべ、今は此処に居ないラゼルに礼を言った。
同じ頃、魔族の宮殿【デーモン城】では……
……セシア様……?
セシアの代理として執務をしていたラゼルは、術がセシアに打ち消された事を感じ目を見開く。
……っ!!行けませんっ!!
……解いてしまったら……貴方の命がっ!!
慌てラゼルは椅子から立ち上がると、執務室を飛び出した。
……しかし、こうして良く見れば見るほど似てる……
腕に抱かれたまま眠っているクレイスを見て、セシアは目を丸くさせた。
……一族の子孫には違いないが、子孫が本人みたいに似るものか?
……世界には不思議がいっぱいだな
頷くとセシアは首を傾けた。
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