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それから半年後。
長年に渡り穏健派として、他の種族と親交を深めていた魔王が魔界から姿を消してしまい……
魔王に変わって、黒魔導士ラゼルが魔族を率いて数多の種族に宣戦布告し……
世は再び戦乱の時代が到来していた。
雨が降り頻る中、小さな港町ウィンディ街中を一人の青年が走っていた。
銀色の腰まである長い髪をポニテールにし、茶色いマントを羽織り、背中には大剣を差した美しい顔立ちの青年。
クレイス・ホールフィード(21)。
各地で悪行の限りを尽くしている魔族を討つべく、正義の勇者を目指しており、剣技は勿論……
魔法にも長けており、これまでも数多の魔族を討伐していた。
……困りましたね。夕暮れを当に過ぎてしまいましたし……宿もこの雨だと何処も満室……
今夜は野宿でしょうか……。
街を抜け、森に入ると木の下に行き雨宿りしながらクレイスは空を見上げ考える。
ゾクッ
「っ!?」
不意に魔族の気配を感じてクレイスは辺りを見回す。
…………魔族…………いや…………ただの魔族ではない……
……悪魔か……それも高位の……
クレイスは冷や汗を掻きながら、鞘から大剣を引き抜けば構え辺りを警戒する。
『此処は死の森。何人足りとも立ち入る事許さぬ』
…………死の森…………?此処が街の人から聞いていた噂の……
森の中から男の声が聞こえ、クレイスは目を細めた。
『これ以上森の奥に入れば、お前の身は保証できない』
…………単純な脅し文句ですね。
再度森の中から男の声が聞こえ、クレイス
はフッと笑みを浮かべる。
「……上等です!!私は勇者として魔族を成敗する旅を続けている者です!!」
「貴方がこの森で繰り返した悪事の数々見過ごせません……私が貴方を討ち果たして差し上げましょう!!」
木の下から出ると、クレイスは透き通るような声で声高らかに言い放つ。
『……愚かな……』
声が聞こえたと同時に、森の周囲から紫色の光球が現れ……
クレイスに向かって飛んでくる。
「……せいっ!!」
クレイスは全ての光球を大剣で斬り裂き、雨の中駆け出した。
ボンッボンッボンッ
斬り裂かれた紫色の光球は炸裂し、クレイスの四肢を掠めながら傷付けて行く。
それにも関わらずクレイスの走る足は止まらない。
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