第1章

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会ったばっかりじゃないのにな。 やっぱり智樹さんは覚えてないんだろうな。 でも、智樹さんはあたしのこと、妹くらいには大切に思ってくれているのかな。 だから、さっきも怒ってくれたのかもしれない。 だけど実際は妻なんだけど。そこに格上げされる日はいつなのだろう。それよりもそんな日がくるのだろうか。 妻として見られていなかったとしても、今はこの状況が気持ち良かった。 少しでも大切に思ってくれているのなら、それだけで満足だ。以前は気づいてももらえない状態だったのだから。 すぐそばに智樹さんの顔があって、上目づかいにちらちらと見てみる。照れくさいけど、心地よい。こんな状況がずっと続けはいいのにと思いながら、心地よすぎてまた眠くなってくる。 「お酒臭い」 腕の中で小さく言って、それから付け加える。 「好きだよ」 背中に回って力強く抱きしめてくれる温かな腕の中で、あたしは安らかで心地よい眠りへと落ちていった。
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