第1章

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15分後、取るものもとりあえず都乃は飛んできた。  「冬華、大丈夫?」  「みや、あたし…上司にレイプされた…。」  「え?…うそ…上司に?…なんで…。」  都乃は信じられないといった様子で、一瞬、固まった。  「ちょっと待って。冬華、あんたんとこ、そんな上司がいるの?セクハラで訴えなよ。」  「…できるわけないじゃん…。」  「どうして、そうなったわけ?いきさつ聞いていい?」  「会社の飲み会で、帰りが一緒になった…。」  「…んんん…ふゆ、あんた拒否出来なかったって言うの?」  「…だって、仕事フォローしないって言われたし、一番頼れる上司なんだよ…。」  「…。」  都乃は、ため息をついた。  「あんたのことだからね…そうなるわけか…。」  「みやだったら、どうした?」  「ん…多分、触るなって、ビンタして逃げるよ。」  「…そっか…あたしが悪いんだ…。」  「ふゆ、自分を責めちゃいけないよ。あんたの弱い立場を利用した性質の悪い奴は、あっちだからね!」  都乃は結構はっきりした性格で、仕事も難なくこなすキャリアを持っていた。  他人に媚びることのない、自立した出来る女だ。  冬華は、そんな都乃が羨ましかった。  「やっぱり…みやは上司を敵に回しても、困らない力を持っているからね…。」  「そんなことないけど…。」  そう言って都乃は、冬華の淹れてくれた温かいコーヒーを一口、ふくんだ。    「啓斗には言った?」  「言えないよ…。」  「前から思ってたけど、ふゆ、もう啓斗はやめなよ…。彼女と別れる気ないんでしょ!」  「そんなこと…わからない…。」  「…あたしだったら、そんな男と付き合わないんだけどな…。」  「そうだね…。貴浩はみやに一途だもんね…。」  「なんで、冬華はそうなるかなー。」  冬華は、うつむいた。  「別に責めてるんじゃないよ。たださ…ふゆも幸せになって欲しいからさ、もっといい人いないのかなぁと思ってさ…。」  都乃には、冬華のノーと言えないところが、もどかしかった。    「よし、今日はふゆに1日付き合ってあげるよ。ちょうど、予定がなかったんだ。」  そう言うと都乃は、冬華のキッチンを借りて昼食を作り始めた。  「みや、ありがとう…。」  冬華は、都乃の気持ちがとても嬉しく、固く閉ざされそうになった心に響いた。
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