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(大人なんだから、私情で休むわけにいかない…。)
責任感の強い冬華は、翌日は休むことは出来なかったが、会社の前まで行くと、やはり足がすくんで仕方がなかった…。
「咲本さん、おはようございます。昨日は体調崩されたようですけど、大丈夫ですか?」
同僚の宮下智菜が後ろから声をかけた。
それがなかったら、冬華は出勤できていたかどうか分からなかった。
「おはようございます、宮下さん。もう大丈夫です、ご心配かけました。」
「そうですか、良かったですね。」
二人は他愛もない話をしながら、職場に向かった。
自分のデスクに腰かけた冬華は強い視線を感じ、それが白井のものだとすぐに分かった。
出来る限り、見ないようにした。
しかし、あの夜の悪夢がよみがえり、軽い眩暈を覚えるのだった。
「咲本さん、顔色悪いよ。無理しないで今日も休んで良かったのに。」
そう言ってくれたのは、同じ窓口担当の永峰だった。
「永峰さん、お気遣い有難うございます。もう治りましたので大丈夫です。」
冬華に、ちょっとだけ笑みが戻った瞬間のことだった。
「咲本さん、具合はどう?気を付けてね。」
他でもない、白井が目の前に立っていたのだ。
冬華の顔が強張り、絶句した…。
ごくんと唾を飲みこむのが精一杯だった。
白井はにやりとしながら、その場を立ち去った。
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