第1章

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数日経ったが、たまたま難しい客は来ず、白井に話しかけなくても過ごせる状況だった。  それでも同じ職場なのだから、いつ何時、白井に相談しなくてはならないかも知れないと思うと、冬華の心は重く沈んだ状態から脱出できなかった。  そして翌日、とうとう、そんな日がきてしまった。  定時までに仕事がこなせなくて、残業になってしまったのだ。  気まずいことに、永峰は急用があって残業ができない状況にあり、職場には白井と冬華しか残っていなかったのだ。  冬華は焦った。  (早く終わらせなくては…。)  白井は仕事熱心で、ほぼ毎日、一人で残業している。  無言で、白井は冬華の元へ近づいて来た。  そして、ブラウスの襟元から手を入れ、胸を触ってきたのだ…。  (嫌です…やめて下さい…。)  冬華は必死に抵抗したが、男の力には到底、敵う筈もなかった。  「分かってるだろう、今日これから。」  「分かりません…。こんなの嫌です…。訴えます…。」  「君に出来るわけがない。」  そう言うと白井は、自分の席へと立ち去り、何事もなかったかのように、仕事を再開した。  冬華は動揺し、頭の中が真っ白になった…。  30分後、何とか仕事を片付けると、白井も同様に帰り支度を始めた。  「分かってるよね、逃げたら明日から出勤できないよ。」  「どうしてですか!」  精一杯、強がってみた冬華に白井は、淡々と話した。  「君の性格では訴えることなど出来ない。君は既に、僕を愛し始めている。」  「そんなこと有りません!訴えます!あなたのこと好きになる筈ないです!」  そう言った冬華の唇を白井が塞いだ。  冬華の目から、涙がこぼれた…。    冬華は白井の言う通り、徐々に白井に惹かれ始めていたのだった…。  さらに時間が過ぎ、二人はホテルにいた。  冬華は、もう抵抗せず、されるがままだった。  気持ちが通じ合うと、白井は優しく抱いてくれた。  ひとしきり愛し合った二人は、とても穏やかな気持ちだった。  「過ちで結ばれてしまったけど、あなたのこと嫌いになれなかった…。ずるい…。」  話し始めたのは、冬華の方だった。  「君は僕を好きになる、それが運命さ。」
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