第1章

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 白井と付き合い始めてから、冬華は親友の都乃とも、彼氏の啓斗とも連絡を取っていなかった。  白井とは月に1度か2度、飲み会の帰りや昼間に2時間の有休を使い、密かな交際を数か月、続けていた。    ある日、白井が職場の何人かと一緒に、地域のマラソン大会に出場することになった。  白井は40歳を超えていたが、スポーツも万能だった。  大会は明後日の日曜日で、出場する人もしない人も、結構、応援に行くことにしていた。  大会当日、会場は賑わっていた。  職場から6名が出場したが、みんな完走できた。  応援には、当然ながら、家族も来ていた。  そして白井も、例外ではない…。  奥さんと子供に話しかけている白井に、嫉妬心が出てくる冬華だった。  奥さんは何と、ミスコンテストで優勝したこともある美人だった。  冬華は、幸せそうな白井の妻を見て、夫が浮気しているのを分かっているのだろうかと考えた。  そして多分、白井の女遊びを知っていて、この余裕なのではないかと感じた。    この日、白井が冬華に話しかけることは、一切なかった…。  翌日、冬華は白井とホテルに来ていた。  冬華は白井に、  「奥様、綺麗な方ですね。白井さんは、これまで何人の女性と浮気してきたのかしら。」  そう尋ねたが、  「君が初めてに決まってる。」  と軽くかわされただけだった。  冬華は、それ以上追求しなかった。  物わかりの良い女だと白井も初めから、分かっていたのだろう。  二人は、いつものように短い二人の時間を惜しみながら、愛し合った…。  冬華は口には出さなかったが、  (私は一生、日陰の女なのかも知れない…。)  淋しくそう思いながら、抱かれているのだった。  「ねぇ、出来ちゃったらどうしよう…。」  冬華が尋ねると、  「君は、血液型何型?」  と聞き返された。  「A型です。」  「僕もA型。同じさ。彼氏の子供って言えばいいんじゃないか?」  冬華は反論しなかったが、やはり哀しかった…。
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