第1章

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
1か月が過ぎた頃、数年ぶりに、芳川友博から携帯に連絡が入った。  「冬華さん、久しぶりです。」  「芳川さん、元気だった?」  友博は以前、冬華に何度も恋の告白をしていた。  それは、かなり熱烈にアタックしてきたのだったが、その度に振られていた。  そのうち、友博は冬華のことを諦め、別の恋人を作った。  そして、それ以来、バッタリと連絡は途絶えていたのだ。  「実は僕、彼女と別れたんです…。」  「え?どうしたの?」  「彼女、好きな人が出来たって。」  「…そう、なの…。」  「僕、眠れないんですよ…。冬華さん、一緒に飲みに行きませんか?」  「でも…。」  「心配しないで下さい。襲ったりしませんから。どんだけ僕、冬華さんに振られてると思ってるんです?」 そう言って、友博は笑った。 「うん…。」 3つ年下の友博を哀れに思った冬華は、承諾してしまった。 夕方、待ち合わせの場所に行くと、既に友博は来ていた。  「ごめんね。」  「今着いたばかりです。」  「今日は、飲むの付き合うからね。愚痴でも何でも言ってね。」  「嬉しいっす。冬華さん、まずは何飲みますか?僕は、取りあえずビール!」  「私はビールは苦いから苦手。」  「は?冬華さん、ダジャレですか?あんま面白くないです…。」  「いやだぁ。違うよ。」  慌てて否定した冬華に、  「あはは、分かってますって。相変わらず可愛いなぁ、冬華さん。」  「……けど、思ってたより元気そうで良かった。」    久しぶりに会った友博は、以前より少し男らしく頼りがいが出てきたように思えた。  「芳川さん、なんか垢抜けた感じだね。」  「そうっすか?前はダサダサだったってことですよね!」  「え?いえ、そんなことない…。」  「ホント冬華さんは、正直だなぁ。そこがいいんだけどね。」    数時間が経ち、友博は大分飲んでいたが、酔っぱらってはいなかった。  冬華は、カシスオレンジとウーロンハイの2杯だけ飲んだだけだったので、やはり酔っていなかった。  が、二人とも考えることは同じで、これで帰宅することにした。  そして友博は、冬華を無事に家まで送り届けたのだった。  「冬華さん、今日は有難うございました。」  「こちらこそ楽しかったわ。送ってくれて有難う。」
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!