第1章

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寄り添う二人は遠目では、本当に恋人のようだ。いや、実際夫婦なんだけど。 でも、よく見ると、あたしは目を丸くして肩に力が入っていて、智樹さんはちょっとよそ見をしている。 写真立てにいれて飾れるほどの出来ではないけど、あたしは大満足だった。 「なんだ、これ?菜月、超不自然」 いつのまにかそばに来ていた智樹さんが、写真を覗き込み指を指して笑っている。 「なによ。智樹さんだってよそ見して。こういうときはカメラを見るのが常識でしょ」 笑われたのが悔しくてあたしも言い返してやった。だって、突然智樹さんがあんなことするからでしょ。うれしかったのだけれどさ。 「それ、あとで俺にもくれる?」 智樹さんのさりげない言葉に、あたしは舞い上がりながら「うん」とかろうじてうなずいた。 「俺たちの最初の一枚ってわけだ。…まあ、上出来だな」 「そ、だね」 照れくさくて顔をあげられなかったから、智樹さんがどんな顔をしているのかわからなかったけど、写真を欲しがってくれたのも、最初の一枚って言ってくれたのも、あたしにはとてもうれしいことだった。 それから、おごそかで立派なたたずまいの厳島神社を見てまわり、その後、参道を歩きながら買い食いしたりおしゃべりしたりと、あたしは二人の時間を満喫した。 本当に楽しくて、今日帰るのがとても惜しまれた。 帰っても、広いとはいえ一つ屋根の下で暮らしているのだから、離れ離れになるわけではないけど、こうやってまたデートみたいなことが出来る日はいつになるのだろう。 いつのまにか、どんどん欲張りになっていく。 昨日は妹でも充分だったのに、やっぱりそれ以上の存在になりたいと切に願ってしまう。 前は、隣にいられるだけでも幸せだと思っていたのに。 こうやって楽しい思い出をひとつひとつ積み重ねていきたい。年をとるまでずうっと。そして、ときどき二人で思い出話に花を咲かせる。それはいつまでもいつまでも終わることなく続く幸せなときに違いない。 そんな風に智樹さんとこれからのときを過ごしていきたい。 そう思いながらあたしは、『最初の一枚』が入った携帯を両手で大切に包み込んだ。
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