第1章

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数日後、冬華の職場では、また飲み会があった。  もちろん、冬華も白井も参加した。  そして、しばらくお酒の席を楽しんでから、冬華はいつものように、  「すみません、9時も過ぎてしまったので、お先に失礼します。」 そう言って、ひとり店を出た。  でも帰宅はせず、店の近くの喫茶店に入る。  カフェ・ラテを注文し飲み終える頃、窓の外に目をやると、少し離れたところに白井が立っている。  それは偶然ではなかった。  白井は時間をずらし、冬華に会う為に飲み会を中座してきたのだ。  白井と冬華の付き合いも1年近くなり、それが、二人きりになるためのいつもの行動になっていた。  そして、いつものように喫茶店を出た冬華が、白井と目を合わせ微笑み、いつものようにスムーズに二人でタクシーに乗ろうというその時、いつもとは違うことが起きた。  「冬華さん…?」  目の前に、友博が立っていた。  友博も、たまたま職場の飲み会があって、近くの店で飲んでいたのだ。  友博は、冬華が喫茶店を出たところを目撃し、似てると思い近寄ったが、お互いを見つめ合う恋人同士のような冬華と白井に気付き、愕然とした。  「芳川さん…。」  とても気まずい空気が流れた。  おそらく何十秒という時間を経た頃、いきなり友博が冬華の手首を捕まえた。  「咲本さんの彼氏かな?それじゃあ、僕は失礼するよ。夜道が危ないから送って行こうと思っただけだから。」  白々しい言葉を放ち、一人でタクシーに乗り込む白井だった。  残された冬華は、友博の前で動悸が治まらない。  「ちょっと、お茶でもしませんか。」  断れる状態ではなく、強引に手を引かれて喫茶店に入るしかない冬華だった。  さっきとは違う喫茶店だったのが、せめてもの救いだ。
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