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「いらっしゃいませ。」
「ホットコーヒー2つ。」
「かしこまりました。」
友博は勝手に注文し、冬華を直視した。
当然のことながら、冬華は目が上げられない。
「僕が質問する立場ではないかも知れませんが、あの方はどなたですか?」
「…上司よ…。」
目を伏せたまま、冬華は小さな声で答える。
「単刀直入に言います。冬華さんは、不倫をしているのですか?」
「…いえ…。」
「申し訳ないけど、二人はどう見ても恋人同士に見えました。」
「まさか…。」
「違うと言い切れるのですか?それとも、彼は独身ですか?そうじゃないですよね。彼は僕のことを彼氏かと尋ねました。」
「なんで、あなたに責められなくちゃいけないの?」
「責めたい訳ではないのです。ただ、僕の憧れの女性が、つらい恋をしているのなら、ほうってはおけないのです…。」
「…。」
冬華はそっと目を上げた。
そこには、真剣な顔の凛々しい男性がいた。
「…。」
「…。」
何分の間があったのだろうか…。
運ばれてきたコーヒーに、二人とも口をつける様子はない。
冬華は、自分でも何故だか分からないまま、涙が出てきた。
今度は逆に、友博の方が慌てた。
「すみません、そんなにキツいこと言ってしまったのかな…。」
「ううん…違うの。芳川さんが、とても清潔に見えて、私は汚れてて…。」
それ以上、言葉にならないほど涙は溢れてきて、止まらなくなってしまった。
「そんなことない。冬華さんは汚れてないですよ…。ほんと、僕が追求し過ぎました。すみません。」
1時間ほど喫茶店に居て、冬華を家まで送り届ける友博であった。
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