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冬華の自宅に着いた友博は、
「じゃ僕はこれで。」
と帰ろうとしたが、ふと足を止めた。
背中に感じる冬華の視線が、心細そうに思えたからだ。
友博は振り向き、冬華の目の前に歩み寄った。
「僕はやはり、あなたをほうっておけない…。」
「芳川さん…。」
「今すぐに、僕を好きになって欲しいとは言いません。でも、あの上司とは別れて下さい。あの人より、絶対に僕の方が、あなたを幸せにしたいと思っている。ただ、僕も元カノと別れたばかりなので、もう少し、時間を下さい。…いや、勘違いして欲しくないのは元カノに未練があるからじゃありません。説明しにくいんですけど…。」
「有難う、芳川さん…。」
友博は、冬華が自宅に入って鍵を閉めるのを確認してから、帰宅した。
10分後、冬華の部屋のインターホンが鳴った。
画面を確認すると、啓斗だった。
冬華は迷ったが、ドアを開けた。
「久しぶり。最近、電話も取ってくれないからさ、ちょっと寄ってみたんだ。」
「ごめんね。上がる?」
「え?上がっちゃいけないの?」
「そんなことないけど…。どうぞ。」
「じゃ、遠慮なく。」
啓斗を部屋に通し、食卓に向かい合って座った。
「なんか、よそよそしくない?いつものように、ソファにしようよ。」
「でも、たまにはいいんじゃない?」
「そう?久しぶりに会えたのにな。」
「今日は、こずえさんは忙しいの?」
「…さて、ここで問題です。俺はフリーでしょうか、それとも恋人がいるでしょうか?」
「からかわないでよ。」
「からかってないよ。こずえとは別れた。どっかの金持ちと見合いするんだと。」
「え?」
「冗談みたいだよな。…ということで、答えはフリーでした。だからさ、一緒にソファに座ろうよ。」
そう言って、啓斗は冬華の手を取った。
冬華は、ぼんやり啓斗を眺めた。
啓斗は、冬華を抱き寄せようとしたが、無意識に抵抗されてしまった。
「どうした?冬華。」
「あ、ごめん…でも、今日は帰ってくれる?」
「え?体調悪いの?」
「ごめん…。」
うつむいたまま、それだけ答える冬華だった。
啓斗は、仕方なく帰って行った。
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