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白井が先に帰った後、しばし呆然としていた冬華だったが、何故か涙は出なかった…。
そうして、ゆっくり歩き出す冬華であった。
ぼんやりしながら、何分位、歩いたのだろう…。
歩いてきた実感はない冬華であったが、いつの間にか、自分のアパートの前に着いていた。
部屋の前に行くと、そこには友博がいた。
「芳川さん…。」
冬華は急に力が抜けて、そのまま友博の腕の中に倒れ込んでしまった…。
「冬華さん、大丈夫ですか?」
数十分後、冬華は目を覚ました。
「え?」
自分のベッドに横たわっているのに、目の前に友博がいる光景があって、全く理解が出来なかった…。
「気付いたんですね、良かった。」
「…。」
「僕、何となくあなたの顔が見たくなって、あなたのアパートに来たら留守でした。帰ろうかと思ったところに、あなたがフラフラ帰宅してきて、気を失ってしまったんですよ。」
「…。」
「あ、すみません。玄関を開けるためにバッグを開けたことと、勝手にお部屋に入ってしまったこと、謝ります、ごめんなさい…。」
「あ、いえ…お世話になったんだもの、こちらこそお礼を言わなくちゃ。有難う…。」
「冬華さんの心配しているようなことは何もありませんので、大丈夫ですよ。」
「…ええ…芳川さんは紳士だもの。信じるわ。」
しかし、そう言った冬華の眼が急に曇った…。
白井からの仕打ちを思い出したのだ…。
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