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緊張の糸が切れてしまったのか…冬華は何故だか、無性に笑いたくなってきた。
(ふふふ・・・。)
(私、悲劇のヒロインになっている場合じゃないわ。絡み合っちゃってるけど、でも、3人の男性にかまってもらえてる。そう、私はなんて、幸福な人間でしょう!)
(これから、徐々に距離を取って、考えることにしよう。けど、兎に角、白井さんとは別れよう。どうにか話し合って解決したいけど無理そうなら、拒み続けるわ。それに、今の会社が全てじゃないもの。新しくスタートしたっていい。)
(啓斗のことは、好きだったし嫌いにはなれないけど、やはり、啓斗は自由奔放な人生を歩むと思うし、私はそれに付いていけないのだから、拒む対象になっちゃうわね…。)
(芳川さんは、とても素敵な人、これからも友達として付き合っていこう。今は、やっぱり拒んでいくわ。そのうち、仲よくなれたなら、運命なのかもね。)
冬華は、吹っ切れたように穏やかな気持ちになり、人生を切り拓こうとする力をいつの間にか身に付けていた。
それは多分、短期間の間に彼女を取り巻いた人間関係…男性のみならず女性の友達も含め、彼女を強く変えていったに違いない。
おそらく、一時は愛し合った白井のことをセクハラで訴えるつもりはないだろうが、どうしようもなければ、そういう手段を起こす行動力も例外ではなく、身に付いていることだろう。
さて、芳川友博だが…彼との間に、拒めない関係が生じるのも、そう遠い未来ではなさそうな気配がして、仕方ない…。
冬華は、気持ちが落ち着いたせいか、ふわっと眠気がやってきて、心地よい眠りに就いた。
世の中は、発想の転換で困難を乗り越えることが出来ることを冬華は知った。
むろん全てではないのだが、今回の彼女を取り巻いた事件に関しては、少なくても希望が見える。
夜が明け目を覚ませば、咲本冬華の人生は、だんだんと光の中に羽ばたいていけるようになるだろう…。
過ちは確かに有ったかも知れないが、人間なのだから、やり直しが効くものだと信じていたい…。
≪終≫
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