第二ボタン

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 桜が風に舞い、ゆっくり落ちていく。その下で卒業アルバムを眺めていた。甦る思い出達‥‥ 写真の中で笑うアイツーー  ふと顔を上げれば、アイツが早足でこちらに向かってる。待ち人来る。私の胸は高鳴る。 「なんだよ、急に呼び出したりして」 「なんだとは何よ。座れば?」 私の隣にゆっくりと腰を下ろし、ネクタイを緩める彼。彼の顔を見ることが出来ずに、ただアルバムを捲る。  あるページで手が止まった。私達、三組の個人写真のページ。仏頂面で写る彼。くすぐったいーー 「第二ボタン、誰か貰ってくれた?」 「うっせぇ。どうせ俺はモテませんよーだ」 拗ねたような口調で私に言葉を返す。彼がそっと桜にもたれかかり、彼の肩が私の肩に触れた。 「どんまい。しょうがないから私が貰ってあげる」 左手だけを彼の方へと差し出した。ボタンを引きちぎる音が聞こえ、左手にボタンと彼の手が触れる感触がする。 「ったく、余計なお世話なんだよ」 彼の温もりが離れ、手の中を確認する。貰ったばかりのボタンを強く握りしめた。
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