だって、許せないでしょう?

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「星谷」 水口は星谷に問いかけた。星谷は黒いモヤの先を探すように彼女を見つめていた。 「…何か常に持ち歩いている物はありますか?」 女性は首を傾げながら自身の鞄を開けた。開けると更に黒いモヤが増した。彼女は机に携帯電話、鍵と鞄の中身を並べていく。その中に黒いモヤを発信している物があった。 「その…鏡は?」 小さな丸いコンパクトミラーだった。金色で模様が彫られているコンパクトミラーはアンティークみたいな調度品のような高そうな物だった。 健は気味の悪さを感じ後ずさった。 「これは友達から貰った物なんです」 「ずいぶん古そうな物ですね」 「友達はアンティーク物が好きで…これは誕生日にくれたんです」 星谷が触ろうとすると水口は遮るように先に触った。黒いモヤは彼女の周りを更に包んだ。 「…何かあるんですか?」 「憑き物ではないですね。これは呪いだ」 「呪い…」 彼女は当惑したような表情で鏡を見た。 「…その呪いは解くことはできるが…あんたの友達、付き合いを考えた方がいい」 「止めてください!彼女がそんな事するはずありません!」 女性は水口の言葉を信じたくないのか責めるように水口を睨んだ。 健は黒いモヤの気持ち悪さに吐きそうになった。その姿に星谷は気づき健の隣に駆け寄り背中を撫でた。 「…じゃあ帰るんだな」 水口の突き放すような物言いに女性は苛立ちながら事務所を出た。 健の吐き気は治まり、健は水口を見た。 「…大丈夫なんですか?あの人」 「まぁ、大丈夫ではないだろうな。でも軽い呪いだしな」 「あれがですか?」 健は水口の冷たい物言いに睨んだ。水口は頭をかきながら健を見た。 「現にいきなり出てくるのも霊じゃない。ただ、そのようなものを見せているだけだ」 「霊じゃない…」 「ただ怨み辛みってのは酷いとあんな風にまとわりつく、それにヤられて吐きそうになったろ」 健はあの黒いモヤを思い出して背筋を寒くした。あれが友達に向ける怨み辛み。 「…呪いは解けるけどかけた人に返る。壷毒もそうだったでしょ?」 健はここのバイトに入った時の事を思い出した。犬の呪いを作り出した女性。 呪えば跳ね返る。そして生きている人間が怖いことも。
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