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「じゃあ、どうするんですか?」
「どうするもなにも依頼人は依頼せず帰っていった。だから終わりだ」
水口の言葉に健はやるせなさを感じた。星谷が健の腕を掴んだ。
「…見かけても近づかない方がいい。健の力でも癒せない」
星谷はゆっくり健の腕を放した。
健にはヒーリングという力があった。ケガ、大したこと無い霊ならば一人で徐霊できるようになったが彼女の呪いは解けないのだろう。
もっと自身に力があれば二人の助けになったのだろうかと健は内心思った。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
健は自室で机に向かっていた。目の前の紙には進路調査と書かれている。健の部屋はシンプルな部屋だった。
ベッド、机、必要な物しかない部屋は生活感が無く。彼の荷物は鞄1つだけと言われても納得してしまう部屋だった。
寂しい部屋に窓を叩く音が微かにした。部屋は二階。健は用心するでも無く、星柄のカーテンを開けた。
窓の外には水口の弟、水口継(みずぐち けい)がいた。彼は窓の縁につかまっていた。人間離れした力に健は彼が妖怪と人間が混ざりあった存在だと思い出した。
健は窓を開け、継は窓の縁に腰かけた。まるでロミオみたいだと健は思い小さく笑った。
「…なずなに聞いた。呪いのなんか来たんだって?」
「あぁ…はい。星谷さんに言われて様子見に来たんですか?」
彼が個人的に来ることなど初めてだ。きっと星谷が心配していたから様子を見に来たのだろう。健は彼が星谷の事ばかりなのを分かっていた。
「まぁね。僕といるのに君が無茶しないか心配してた…なずなの良いところだけどムカつくよね」
「彼氏は大変ですね」
健は他人事のように呟き、机の上に出ていた紙を鞄にしまった。
「……友達に呪いをかけるって…何かしたんですかね…」
健の呟きに継はうんざりしたように溜め息を吐いた。
「僕はさ、人間が汚ないものだと思ってるから驚きも何も無いけど。なずな意外皆汚ないよ」
「それは極端ですよ…」
継の物言いに健は困ったように笑った。
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