さい銭箱

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  ポク、ポク、ポク・・・ 木魚の軽快な音が、本堂に響く。   チーン・・・ 凛の音が、響く。 礼拝。 お経を唱えているのは、このお寺の四代目の住職で、本名、五十嵐 重徳。 その後で、お経を読んでいるのは五代目になろうとしているのか別にして、息子の一徳。その横には、奉公に来ている二人。 奉公の二人は、同じ系列の寺の跡取りであるが、年が若いので預かってほしいと頼まれ、住職は一徳の刺激になると思い、頼みを聞いたのだが・・・。 二人とも頭を丸めてはいるが、頼りの無い真面目なサラリーマン風の中山 修、中肉中背の気の弱い村田 晃の二人なので、元刑事の一徳の雰囲気に、ビビッていた。 朝のお経が終わった。 住職の見ていない所で、一徳はあくびをしながら、 「あーあ、終わった!」 今日は、月一度の『さい銭箱』を開ける日。 一徳も唯一楽しみな行事であった。 「晃、修。中身を大広間に運んでくれ」 「はい」 二人は返事をして、さい銭箱を開け中身を大広間に運んだ。 「よーし。ごくろう、ごくろう」 一徳は、畳の上に白い布を広げて、準備していた。 「よし。あけるか」 一徳の合図で、白い布の上に、さい銭をあけた。
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