10 異端者

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 慧は、オレが小さい頃から、うちの近くまでたびたび様子を見に来ていたようなので、オレの家族のことは知っていて、たまにお互い話題にしたりもするんだけど。  でも、慧の家族のことは──慧自身が何も言わないので、オレも今まであえて聞かなかった。 「俺には、両親と兄がいるんですが……恥ずかしい話ですが、家族とはあまりうまくいってないんです」  オレの表情からそれを察したように、慧が言った。 「俺に限らず、ディシオンはそういうことが多いようで……」 「ディシオンは、みんな自分の家族とうまくいってないの?」 「はい」  慧は笑ってみせたが、その目はぜんぜん笑っていなかった。
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