第1章

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 気がつけば就業時間になっていて、今日はもう帰ろうと帰り支度を始めたとき…  「藤谷主任ってカメラが趣味なんですか?うちの近所にいい感じの公園がありますよ!」  今年入社した新人の須藤君が声をかけてきた。  「いや!最近散策が趣味で…カメラみたいに立派な趣味じゃないんだ。景色を見て歩いているだけで…」  覚えられていた気恥ずかしさでちょっと早口になってしまった。  「そうだったんですか。景色が良くてゆっくりできる感じのとこなんです!もし今日時間あるなら途中まで一緒にどうですか?」  キリッとした二枚目で爽やかに笑う須藤君は、きっとサラリーマンなんかより俳優業の方があってるんだろうな。  「いや…つき合わせても悪いから場所だけ今教えてもらえたら自分で行くよ。」  並んで歩いて女性社員たちに比べられても悲しくなるだけだし。  「大丈夫ですよ!帰り道に通る所ですから。」  断りにくくなってしまった…  まぁ迷惑でないなら構わないか。  それに良さそうな所なら別の日にゆっくり行っても良いだろう。  「じゃあお願いしようかな。」
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