<シャーロック・ホームズな夫>

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国民生活センター、悩み相談室、はたまた占い師への相談案内など、様々な検索結果が並んでいる。行政法人や占い師に悩みを打ち明けたところで、苦笑いをされるか、在り来りなことを言われるだけ。とても助けてもらえるとは思えない。 やはり自力で解決する他ないのだろうか。とはいえ最早どうにか出来る希望は皆無に近い。離婚。恵美の脳裏を過ぎった二文字。しかし頭がおかしくなりそうな現状でも、彼のことを嫌いにはなれずにいる。 ひとつ大きな溜息をつき、画面を下へスクロールさせていくと目に留まる単語があった。 「……感情屋。感情屋?」 自身に問掛けるように声にだしてみたものの、その意味は分からない。いつだったかニュース番組で、法的に問題にならない内容なら何でも引き受ける何でも屋に密着。という特集が組まれていたのを見たのを思い出した。 インタビュアーに、実際に依頼された内容を訊かれると、バレンタインの日に気になっている相手にチョコレートを渡して欲しいだとか、部屋の片付けが出来ないから手伝って欲しいなどと、社長が答えており、わざわざ人を雇うほどではないように見受けられた。 感情屋のホームページを開くと、黒い背景の上部に感情屋と白色であり、中央には“怪奇事件、化物退治。なんでも解決します。仕事をください”と書かれている。そして下部に記載されているメールアドレスの横に“感情屋・緩井”と表記されていた。 化物退治。まともな会社が書くような内容ではない。インタビューされた何でも屋の社長も言っていたが、特殊な仕事をしている人は、一般人よりもどこか感覚がズレている、いわゆる変人らしい。画面に広がる会社の売り文句を目の当たりにし、それを実感した。 しかし本当に変人だとしたら、他では苦笑いされる私の相談にも真剣にのってくれるかもしれない。記載されているメールアドレスをクリックしてみると、相談フォームへと画面が切り替わり、住所・年齢・性別・相談内容を入力するよう指示が表示された。 胡散臭さは拭えないが、考えあぐねた末に試してみようと思った。仮に悪戯で作成されたホームページだとしても、金銭のやりとりをしたわけではないし、住所は都道府県のみの入力だけでも問題ないようなので、こちらが困る展開にはならないだろう。 唐突にドアの向こうから聞こえてきた推理に耳を貸さずに、相談内容の入力を始めた。藁にもすがりたい気持ちだった。
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