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「本当に思い出したのか?」
「ああ、明日は恵美の誕生日。明後日は僕達の結婚記念日だ。それなのに僕は、なんて酷いことを……」
壁掛け時計を一瞥する。二十二時五十五分。
「なるほどな。ちょっと電話かけてくる」
三人で話し合い、恵美を残して家をでて行ったあと、恵美のフルネームを検索にかけた。
同姓同名の人のSNSサイトのアカウントが無数に表示される。その中には自分の顔をアイコンに設定しているものもあった。
アカウントを作成し、自分の好きな内容を自由に投稿でき、世界中の利用者と繋がるアプリ。以前に和也に「お前も、こういうツールで依頼者を探せよ」と勧められたことがあった。
面倒だと思いながらも断り切れずに、個人情報を登録してアカウントを作成した。結局なにを投稿するわけでもなく放置していたが、予め登録していたお陰で、スムーズに確認することができた。
間もなくして友人とおぼしき人物と、笑顔で写る恵美を見つけた。それだけでは友人のアカウントという可能性もあるが、自己紹介欄に“ホームズなんか嫌い”と記入されているのを見て確信をもった。
同時に生年月日を入力する欄も埋められており、明日が誕生日なのを知ることが出来たのだった。
妻の誕生日などを忘れていたことを悔いている智也に、その事実を告げる必要はないと考えた。
自分を責める智也の言葉を背に、緩井は携帯を耳に押し当てながら、玄関のドアを開けた。
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