22.迷い込んだ場所 

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目覚めた場所。 それは私が見慣れた景色だった。 使い慣れた机。 学校の教科書。 そして柔らかい羽毛の使い慣れた布団。 光を運んでくれる電気。 あれ? どうして……私、ここに居るの? あんなにも帰りたいと求め続けてたから 夢を見てるの? 夢でも……夢でもいい……。 今はもう少し大切な、この世界を感じていたい。 布団の中、体を小さく丸めて微睡の時間を貪る。 「をいっ。  花桜、起きてるか?」 微睡の中に落ちる間際、ドアをノックする音が聞こえて、 敬里が姿を見せた。 「んん~……。  敬里、ずっと言ってるでしょ。 勝手に部屋に入らないでって……」 えっ? 敬里? なんで敬里がここに居るのよ。 あの場所に……敬里は居なかった。 私が夢を見てるから? すーっと手が伸びて、 敬里の手が額へと伸びてくる。 「薬、効いたみたいだな」 そう言うと、敬里は気が抜けたように、 床の上に座り込んだ。 「えっ?」 現状が掴めない。 「花桜、全国大会の後、何してたんだよ」 何してたって……。
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