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全国大会の後……突然の雨に降られて、
その光に誘われて辿りついたのは幕末。
夢だから……夢だから、言ってていいよね。
本当のこと。
「えっ?
瑠花と舞と一緒に幕末までトラベルツアー」
冗談めかして告げた言葉。
何時ものように、『何言ってんだよ。花桜』なんて
敬里は笑い飛ばしながら突っ込んでくれると思ってたのに、
目の前のアイツは、じーっと私を睨みつけたまま。
「やっぱ、お前熱で頭イカレタ?
オレ……マジ心配したんだぜ。
雨ん中、道路で熱だしてぶっ倒れてるお前見つけて。
しかもあんなとこで何やってんだよ」
えっ?
何?
私の願望が見せる、ひと時の夢じゃないの?
布団の中から手を出して、古典的ながら抓った頬は
しっかりと痛みを伝える。
夢じゃないの?
「人が真面目に話してんのに何ふざけてんだよ。
頬抓って。
今の文明のレベルでタイムトラベルなんて出来るはず
ねぇだろ。
花桜はもう少し休んでな。
祖父ちゃんには、まだ稽古は無理だって言っといてやるよ」
それだけ一方的に聞き終わると、敬里は、
私の部屋を出て行った。
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