22.迷い込んだ場所 

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確かに……痛みを感じた……。 だったら……この世界は夢じゃない。 ……帰って来たんだ……。 あの辛かった幕末から。 瑠花も舞も帰ってこれたのかな? 慌てて、ベッドから体を起こすとだるさが際立つ。 それでも這い出して携帯電話を探すものの、 使い慣れたそれは、近くに見当たらない。 そのまま家電の子機の傍まで歩くと、 かけ慣れた電話番号をプッシュしていく。 まずは舞。 いつもは呼び出し音がなる、 その電話番号はすぐに機械音声へと変わる。 『お客様がおかけになりました電話番号は現在使われておりません。  もう一度電話番号をよくお調べの上お電話ください』 えっ? 何? 慌てて受話器を置くと今度は瑠花の家へと電話をかける。 コールが鳴り響き暫くすると、 聴きなれた声が受話器の向こう側から聞こえる。 「もしもし。  おばさん?ご無沙汰しています。 私、山波花桜です。 すいませんが瑠花ちゃんいますか?」 懐かしい声を受けて軽い気持ちで繋げた会話。 すぐに……瑠花の声がきける。 そう思っていたのに、帰って来た言葉は、 想像もしないものだった。 「どちらか間違えてませんか?  うちには、ルカと言うものはおりません」 その言葉の後、一方的に途切れた電話。 もう一度、瑠花の電話番号にかける。 受話器を取ってくれたのは、 私も良く知った瑠花のお母さん。 「嘘っ。  おばさんは、瑠花のお母さんでしょ。  どうして、瑠花はいないなんてそんなこと言うんですか?」 冷静になろうと思ったのに、 感情的になった私は声を荒げて……。 「あなたこそ、いい加減にしてください。 うちには、子供はいません」 電話の向こうの人はそう言い放つと、 ブツっと電話が切られた。 舞の電話番号は使われてない。 瑠花は存在しない……。
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