22.迷い込んだ場所 

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どうして? そんなことない……。 瑠花と舞は、私の大切な親友。 そのまま部屋から飛び出すと、私は見慣れた景色を走り抜けて、 二人の自宅へと向かう。 最初に辿りついたその場所、 舞の自宅があった場所には公園があり、 そこに舞の自宅はなかった。 崩れそうになる体を必死に支えて、 今度は、瑠花の自宅へと向かう。 見慣れた建物。 見慣れた家。 そこから出入りする、おばさんも、おじさんも 私が見知った人なのに……表札を見つめると、 そこに刻まれてあった瑠花の名前は存在しなかった。 あまりの出来事に、その場に崩れ落ちる私の体。 どうして? どうして……私だけ? 二人の居ない世界に帰って来たかったわけじゃない。 瑠花っ、舞っ。 崩れ落ちて、泣き続ける私に、 背後から声がかかる。  「何やってんだよ。  花桜。  おじさんとおばさんから、  花桜が部屋からいなくなったって、  道場に連絡があったんだよ。  探しに来てみたら、なんだよ。  人の家の前で泣き崩れて……」 「だって敬里……ここ……瑠花の家じゃない。  アンタ、ずっと瑠花に片思いしてたじゃない?」 「瑠花?  誰だよ、そいつ」 素っ気ない反応の敬里にさらに言葉を続ける。 「瑠花も舞も私の親友。  敬里も一緒に良く遊んだでしょ」 必死に告げる言葉も何も意味をなさない。 「お前さぁー。  やっぱ、あの日からおかしいぞ。  ちゃんと病院で精密検査して貰えよ。  倒れたショックで、頭とか打ったんじゃねぇのか?  ほらっ、立てよ」 そう言うと、敬里は私が立ちやすいように 体を支えて手伝ってくれる。 敬里は……二人を知らないこと以外は、 あの時と変わらないままだけど二人を知らない敬里と、 この場所に居るのが辛かった。 敬里が私を気遣いながら、 自宅へと歩いていく。 「なぁ?  花桜、どうしたんだよ。  さっきから険しい顔ばっかしてる」 「…………」 敬里はそう言っても、 私には何も続けられないよ。
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