22.迷い込んだ場所 

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舞と瑠花はちゃんと存在する。 だけどこの世界に二人は居ないんだもの。 どうしたら、私は二人を助けてあげられるの? どうしたら……? 最初に居た場所は、この世界に良く似ていた、 三人が居た世界。 次に居た世界は……幕末。 幕末の世界は決して楽しいことばかりじゃなかったけど、 精一杯、生きてた。 そして……あの日……。 芹沢さんが殺される運命の日。 私は瑠花を助けたくて、必死に雨の降る中、 瑠花の元へと駆けつけた。  瑠花と共に、その場所から逃げ出してる途中、 敵が現れたんだ。 刃物がキラリと光って、私の方に迫ってきた。 だから……反射的にその刀を逸らした隙に 相手の体の中へと刀を突き刺した。 肉を突き刺した感触が、 今も……この手にはリアルに残ってる。 突然、震えだした右手を止めるように 左手をゆっくりと押さえつける。 震える体を、必死に止めたくて身を縮める。 ……私……殺したんだ……。 山南さんから貰ったあの刀で。 私……人を殺したんだ……。 自らの手で、その人の命を奪ったんだ……。 「おいっ。  どうしたんだよ。  花桜、体震えてるぞ。  唇も真っ青になってんじゃねぇか?  何やってんだよ」 心配そうにかけられる敬里の声にも、 今は何も返事することすら出来なくて。 私の脳裏は、肉の中に吸い込まれていった刀の感触だけが リアル襲い掛かっていく。 真っ赤な血が、私の右手へと伝わる。 手が洗いたい衝動に駆られて、 帰り道のコンビニの洗面所へと駆け込む。
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