90人が本棚に入れています
本棚に追加
/383ページ
外を見ていた俺は眼を閉じ、ジッと彼女の声に耳を傾ける。
「‥‥電話、切らないの?」
『‥‥グス‥‥‥ーーんっ‥グス』
雨音と慟哭を抑える声‥。
‥全く馬鹿げてる。
誰かも分からない相手に、自分の時間を裂くなんて‥。
でも彼女の声はまるで今だけでいいから話を聞いて欲しいかの様に俺の耳にまとわりつくんだ。
「‥‥俺じゃ君の話を聞いてあげられない。
電話しようとした人に連絡した方が楽になるんじゃない?」
『‥‥‥ヒック‥‥は‥はい‥。
そー‥ヒク‥ですね‥』
「‥じゃ、そーして。
俺じゃ君を解放してあげられないから」
暫く彼女からの返事はなく、電話も切らないでただ小さく泣く声だけが雨音と共に聞こえた。
‥‥‥‥。
俺は彼女に聞こえない様に溜息を落とす。
面倒な事に巻き込まれたと思う反面、完全に彼女を突き放す気にもなれない自分がいた。
最初のコメントを投稿しよう!