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春休みも残りわずかになった四月の上旬。
春の雷鳴が山の中にある木間呉(きまぐれ)町市営キャンプ場を襲った。
『ピカッ、ゴロロロ』
突然訪れた雷鳴で辺りが悲鳴に包まれる。
きゃー、いやだぁ、死にたくない、と私の耳に届く。
「大丈夫だよ。すぐに止むって朝に観たテレビのアナウンサーがいってたし」
イケメンで長身でいかにも王子様のようなルックスを持った『猛(タケル)』と自らを名乗った男が震える今時の少し化粧の濃い女の肩を抱きしめながら微笑む。
その爽やかな笑顔にほだされたのか、女は分かりやすく頬を染めた。
その様子を少し離れた場所で窺っている私。
それに気付いた猛が怪しげな笑みを浮かべ私を見詰めてくる。
一瞬、心臓を鷲掴みにされたような痛みが体を襲い、自分の平衡感覚が捻れていく気がした。
(気持ち、ワルイ・・・・・・)
指先から熱が逃げていく。
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