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「何故魔王がここにいる!」
「それはこちらのセリフですよ」
苛立った声が、玄関の前に反響する。
ぴりぴりと静電気を散らしながら、カマエルは声をあげた。
片や、魔王の中の1人、ハンスことリヴァイアサンはゆるりと首を振る。
どこか呆れたような嫉妬の様子に、剛毅のイライラが積もっていくのが目に見える。
「ねぇ、傲慢。あの人たちは何?」
「あぁ、天使……聖剣です。要は我々とは敵対する相手ですね」
向かいに立った者たちを指し、近くに居たルシフェルに問いかけるも、銀炉――ベルフェゴールにとってはあまり興味の持てる事柄ではなかったよう。
「わかった、ありがと」そう告げ、ててて、とくぐったばかりの扉の方へと再び向かう。
思わずため息を吐いた傲慢だが、彼の視線は鋭いままで天使たちを見据えていた。
「全員……ではないようだな」
「……えぇ、そのようですね」
怠惰の代わりに傲慢の隣に立ったのは、セリーヌこと強欲の魔王。
彼女の言葉にそっと頷きながら、彼らの出方を伺う。
「うわ、うわわ。ルシフェルだ。どどどうしよう……」
「落ち着きなさいよ、ザドキエル。今のわたしたちじゃ何もできないわよ」
「そうそう。それにしても、この屋敷は昔からある筈なのにきれいなのね…」
ちなみに、ザドキエルはいまいち眼中にはない。
そんな彼を見ながら、ラファエル呆れと共にため息を吐きアナエルはくすりと小さく笑う。
そうして周囲を見渡しながら、薄暗い廊下近くへと歩いていった。
「あれ、」
妙な空気の流れる空間に声が落ちたのは、そのときだ。
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