英霊の盾

3/6
前へ
/108ページ
次へ
「・・・・・リュミエル・・・・・リュミエル・・・・・」 何処からか響く声に導かれ、 私はふと気が付くと、 暗く殺風景な牢獄ではなく、 天使の光輪の様な形の灯に照らされて、 狭いが姫だった頃の自室並に綺麗な部屋に来ていた。 懐かしい程に柔らかなベッドの上で、 多くのぬいぐるみや光に囲まれており、 ふと横を見ると心配そうな顔をする、 黄色い肌で平たい顔の少女が見詰めていた。 私よりやや年下だろうか? 見た事無い形の奇妙な服を着ている。 「此処は狭いけれど天国?貴女は天使?」 「い、いえ!その!」 「残念!貴女を呼んだのは天使ではなく、 悪魔のあたしタスマニアデビルよフフフ」 すると耳元でぬいぐるみの中ではドス黒い、 異様な殺気に満ちた小さな犬か熊の様な獣が話し掛けて来た。 「なるほど可愛らしいが、 確かに悪魔と言った感じがするわ」 「そう!此処は貴女が居たオリヴィエ王国とは全く別の世界。 日本国よ。 この茨城ひろ子は元総理大臣の娘よ」 なるほど本当に閣下な大臣の娘だから、 王女の私よりは狭いが綺麗な部屋に居る訳か。 ドアには黒い軍服を着た、 屈強な騎士が、 護衛として一人だけ立っている。 日本国と言うのは見た事も無い家具や衣服で溢れていて、 非常に豊かな国の様だ。 これも悪魔崇拝ゆえなのだろうか? 「まぁあそのナリじゃなんだから、 風呂にでも入れてあげなさい」 「そうだね」 風呂は王宮の物に比べて遥かに小さいが、 石鹸は液体だし、 お湯が短時間で沸くのは驚いた。 この国は魔法がそこまで普及しているのだろうか? お湯も何故か細かい穴から無数に出る。 「どう?気持ち良い?痣だらけだけど染みない?」 「えぇ・・・・・こんなのは始めてよ」 薄汚れた薔薇桶で、 看守に覗かれながらの行水に比べれば、 やはり天国だ。 「服は私のを貸すね。 着たら食事出すよ」 私は大臣の娘の、 少し窮屈な服を着て居間に行く。 するととんでもない光景が飛び込んで来た。 「フン!フン!」 「な、何でこの男も貴女の服着ているの?」
/108ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加