英霊の盾

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「・・・・・リュミエル・・・・・リュミエル・・・・・」 何処からか響く声に導かれ、 私はふと気が付くと、 暗く殺風景な牢獄ではなく、 天使の光輪の様な形の灯に照らされて、 狭いが姫だった頃の自室並に綺麗な部屋に来ていた。 懐かしい程に柔らかなベッドの上で、 多くのぬいぐるみや光に囲まれており、 ふと横を見ると心配そうな顔をする、 黄色い肌で平たい顔の少女が見詰めていた。 私よりやや年下だろうか? 見た事無い形の奇妙な服を着ている。 「此処は狭いけれど天国?貴女は天使?」 「い、いえ!その!」 「残念!貴女を呼んだのは天使ではなく、 悪魔のあたしタスマニアデビルよフフフ」 すると耳元でぬいぐるみの中ではドス黒い、 異様な殺気に満ちた小さな犬か熊の様な獣が話し掛けて来た。 「なるほど可愛らしいが、 確かに悪魔と言った感じがするわ」 「そう!此処は貴女が居たオリヴィエ王国とは全く別の世界。 日本国よ。 この茨城ひろ子は元総理大臣の娘よ」 なるほど本当に閣下な大臣の娘だから、 王女の私よりは狭いが綺麗な部屋に居る訳か。 ドアには黒い軍服を着た、 屈強な騎士が、 護衛として一人だけ立っている。 日本国と言うのは見た事も無い家具や衣服で溢れていて、 非常に豊かな国の様だ。 これも悪魔崇拝ゆえなのだろうか? 「まぁあそのナリじゃなんだから、 風呂にでも入れてあげなさい」 「そうだね」 風呂は王宮の物に比べて遥かに小さいが、 石鹸は液体だし、 お湯が短時間で沸くのは驚いた。 この国は魔法がそこまで普及しているのだろうか? お湯も何故か細かい穴から無数に出る。 「どう?気持ち良い?痣だらけだけど染みない?」 「えぇ・・・・・こんなのは始めてよ」 薄汚れた薔薇桶で、 看守に覗かれながらの行水に比べれば、 やはり天国だ。 「服は私のを貸すね。 着たら食事出すよ」 私は大臣の娘の、 少し窮屈な服を着て居間に行く。 するととんでもない光景が飛び込んで来た。 「フン!フン!」 「な、何でこの男も貴女の服着ているの?」
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