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歌詞のひと言 ひと言を伝えるように
穏やかに歌うその曲は
とてもやさしくて
切なかった
歌い終わってコチラを見る彼に、
「 キレイ…。やっぱり好きです。」
そう言って笑ってみせると、自分の目尻から涙が流れたのが判った。
慌ててそれを拭うと
「 有難うございます。……中でタクシー呼んでもらいますね。」
とだけ言った
「 ……はい。」
それきり彼は何も話さず、私達はホテルの中へと入っていった
フロントで自分はタクシーを呼んでもらい、彼は部屋のキーを受け取る
キーを手にフロントを離れた彼に話掛ける
「 じゃあ、お疲れ様でした。明日には帰国されるんですよね?」
向かい合う形でそう言うと
「 えぇ。」
短く答えられ
「 短い時間で色々経験出来て楽しかったです。特に最後に聴かせて頂いた曲、嬉しかった。」
「 こちらこそ、お世話になりました。」
「 また、会えると良いな。応援してますね。」
そう言った瞬間、彼が左手で静かに私の右手を掬うように取る
彼の顔を見ると、彼も私を見てる
「 あの…… 」
「 明日の9時45分の便なんです。」
「 え?」
「…それまで、一緒に居られませんか?」
「 …… 」
何も言わずにいると、次第に彼の眼が反らされていく
その様子に、
今日観たスタッフの会話を隠れて聞く彼の背中や
外で一人歌い『まだまだ』だと言う姿
本番で歌う姿
そして、自分だけに歌ってくれた歌が浮かぶ
私は、近くを通ったホテルスタッフに
「 excuse me? How can I cancel a reservation the Taxi? 」
とお願いした
その意味を理解した彼の手に力が入ったのが、掴まれた自分の手から伝わる
スタッフに自分の名前を告げると、私達はエレベーターへと向かった…
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