第1章

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「えっ?」 「 いや、単純に疑問に思っただけだよ。どうして受け入れたのかなってさ。」 同じベッドの隣に横たわる彼からの問いに、天井を見詰めたまま 応えようとした 「 どうしてって… 」 「 別に、ただ興味が沸いただけなら、それはそれで構わないしさ。ジャーナリストと俺みたいな駆け出しアーティストの接点なんて、今回みたいな事でも無ければ有り得なかっただろうから…。」 私の答えを待たずに発せられたその言葉に、どこか自虐的な含みと刹那な関係を匂わせられたと感じたのは、あのやり取りを 彼の気付いてない後ろで、私も一緒に聞いたからだろうか? 「 …自信ない?」 そう言って寝返りを打ち、彼を見つめると、彼もコチラを向き見つめてくる 大きな国際的スポーツイベントをほんの間近に控えた、遠く日本を離れたこの地で私達は出会った… 「 通訳ですか?」 報道ジャーナリストとして出演等を契約してるテレビ局の制作スタッフから依頼されたのはつい昨日の事だった 「 そう。俺報道からスポーツ関係に移動したろ? それで、今度始まるあのイベントのウチのテーマソングをそっちのメインスタジアムで生演奏して、日本へ中継する企画も担当してるんだけどさ。」 「 えぇ。」 「 その企画の為に頼んでた通訳が、今居る国の天候不良でそっちに飛べなくなってさ。何とか通訳無しで一度リハーサルしてみたらしいんだけど、無理だって言ってきてさ。 明日の午前中のリハーサルと本番まで、井上に頼めないかと思って…。」 「 …解りました。ただ、こっちの取材先に動きがあれば、そちらを優先させて良いんであればですけど?」 「 あぁ。そう言われるのは覚悟してたから。何とか頼むよ。」 「 じゃあ、直接スタジアムに行けば良いですか?」 そう言って向かった先に彼 高橋圭吾はいた
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