第1章

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なんの成果も挙げられずに翌月を迎えてしまった。 『気』の鍛錬は相変わらずだったけど、学校では、由美ちゃんの誘いに乗って、テニス部を見学した後、無事入部を果たしていた。一応毎日部活があるから、森野さんの迎えも少し遅めにしてもらっている。 それにしても、屋外のコートでこの打球音を聞いていると爽快な気持ちになる。 一年生だからそんなに多くの時間打たせてはもらえないけど、この場にいるだけで、わくわくしてくる。 ひさしぶりだから余計かもしれない。 ラリーをしている先輩の姿を見ているのも楽しいものだ。 「明日香先輩、今日も素敵ねえ」 一緒に球拾いをしていた由美ちゃんがうっとりと見とれて言う。 「本当だね。綺麗なだけじゃなく、テニスもうまいんだね。かっこいいなあ」 3年生の橘明日香先輩は学校一の美人と評判で、外見だけじゃなく性格もよく、サバサバしていて後輩の面倒見もいいので、みんなの憧れの的だった。 先輩たちを見たり、おしゃべりしたりと二人でのらりくらり球拾いをしていると、聞き覚えのある声が耳に入ってきた。 「まじめにやってる?」 「え?」 驚いて顔をあげると、なんと智樹さんがコートの入り口で「よっ」と手を挙げている。 「ど、どうしたの?」 あたしは急いで駈け寄り聞いた。 「今理事長に挨拶してきたんだ。これからサッカー部に顔出してくるから、そのあと一緒に帰ろうな」 「う、うん」 急な登場で心の準備がうまくできない。それに一緒に帰ろうなんて、なんかうれしい。 あたしが呼吸を整えていると、驚いて固まっていた由美ちゃんがようやく口を開いた。 「鷹司先輩!」 ひっくり返った声で叫ぶと、他のテニス部員みんなが振り返った。 「え?鷹司先輩?」 「うそ!ほんとだ!本物!」 「きゃあ!」 一斉に駈け寄ってきた女子にたじろいだあたしは、智樹さんを置き去りにしてその群れを避けるように飛びのいた。
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